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以前の彼は、例えるなら忠実なマリオネットのようで。
一度命じられれば、言われた以上の結果を残し、
常に主の傍近くに控え、表情を変えず、自分を殺していた。
悲しみに滲む顔どころか、子供のような笑みすら浮かべない。
氷のように固まった、あまりに頑なな心の持ち主――だった。


――あの花のように優しい人が現れるまで






Thawing of snow







コンコンと。
扉を叩く軽い音にそれまでひたすら書類に視線を落としていた紅い瞳が上を向く。
横目で柱時計を見遣って時刻を確認すると、銀のフレームの眼鏡を外し、疲労に凝った眉間を強く揉み込む。
それから少し面倒くさそうに扉の外の相手に返事を返す。「入れ」の一言だけだったけれども。
その言葉を受けて、ゆっくりと扉が開かれる。回廊の光がすき間から段々と差し込んできた。その光を割るようにして黒い影が
室内に慎重に足を進めてくる。見知った、けれど珍しいその姿に部屋主の瞳は微かに瞠られた。

「・・・・・・お前は・・・・・」
「職務中に失礼、ライエル卿」

深々と丁寧に礼を返しながら、以前に数度目にした時には肩に小さな妖精を連れていた青年がライエルの目前に立つ。
漆黒の艶やかな髪をより際立たせるかのような白い肌、それに桜色の唇、何より金と銀の異彩の瞳が目を引く。
あまり他人に興味を抱かないライエルも流石に彼の事は初見の頃から強く印象に残していた。
僅かに記憶の糸を辿り、一度だけ耳にしたその人の名前をライエルは思い出す。

「・・・・・カーマイン、だったか?」

口にしながら、リシャールが偽王として牢屋に投獄されてからまだ数日しか経っていない今時分に何故彼がこうして
ここにいるのだろうとライエルは首を傾ぐ。エリオットの戴冠式に来たというのならそれはもう二日も前に終わっている。
そしてその新王の披露会にもまだ早い。取り立ててこちらに隣国の騎士が、英雄が足を運ぶ理由などないように思える。
ましてや相手は大した縁もないし、近寄りがたいと同国の人間にすら囁かれるアーネスト=ライエルだ。
そのように自分が世に称されてると知っているライエルにはカーマインが自分を訪ねた理由が本当に分からなかった。

「・・・・・・・・何の用だ」

故に、問い質す声が訝しむようなそれになったとしても仕方ない。カーマインもライエルが考えている事が分かるのか
ポーカーフェイスを僅かに崩し、微苦笑を浮かべている。それから一歩前に出て、覗き込むように上体を屈める。
金と銀の瞳が、何処か申し訳なさそうに揺らぐのをライエルは認め、知らず目前の美貌に意識をやった。

「・・・・・本当は、もっと早く此方に顔を出そうと思っていたんだが・・・・。色々立て込んでいると思ったから・・・」
「落ち着くまで待っていた、と?」
「ああ・・・・。それで用件はその、貴方に一つ謝ろうと思って・・・・・」

じっと真っ直ぐにライエルを見据えていた強い双眸が逸らされる。それを魅入るように見つめていたライエルはほんの少し
細い眉根に皺を寄せた。逸らされた瞳が惜しいと思ったから。しかし何故そんな事を思ったのかと表面には出さずに自身に
問いかける。その間、下を向いていたカーマインは目を閉じ、何かを考えているようで。小さく首を振ると彼は再びライエルの
紅い視線を異彩の眦で絡めとり、先ほどは飲み込んでしまった言葉を、今度はちゃんと音にした。

「・・・・俺は、仕方なかったとはいえ貴方の親友を傷つけた。大変申し訳なく思っている。すまなかった」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「謝られても貴方が困るのは分かっている。だから・・・・もし気が済まないのであれば俺を殴ってくれてもいい」

スッと、カーマインの白い指先が伸びてライエルの薄い手袋に覆われた手を掬い取る。それはさも「殴れ」と言っているかの
ような所作で、手を取られたライエルは驚いたような顔をする。まさかそんな事を言われるとは思いもしなかったからだ。
大体、正当性は彼らローランディア側にあり、むしろ自分こそが懲罰を受けねばならぬ立場であるというのに。
頭を下げられ、殴れと言われてもライエルは困惑するしかない。しかも、彼は気づいてしまった。自分の手を取る青年の
細い指先が微かに震えている事に。そんな人間を本当に殴れるような人でなしがいるならお目に掛かりたいくらいだった。
しかし、カーマインは震えていながらも手を離す兆しがない。ライエルが何か応えを返すまではそのままでいるつもり
なのだろうか。ライエルは軽く肺に溜まった息を吐き出すと青年の意向に合わせる事にした。

「殴るつもりはない」
「・・・・・・・しかし・・・!」
「せっかく綺麗な顔をしている事だし、もう少し自分を大事にしたらどうだ」
「・・・・・顔は関係ない」
「まあ、そうだが。ともかく私はお前を殴る気などない。失せろ」

シッシ、と空いてる方の手でライエルはカーマインを払う。掴まれている手も振り払ってしまおうかと思ったが、それをしようにも
カーマインがとても見てはいられぬほどに表情を悲痛なものに変えたので知らずライエルは手の動きを止めた。どうする事も
出来ずに暫くそのままの状態が続く。しかし、流石に悪いと思ったのかカーマインはライエルの手を離した。それから一歩下がる。
逡巡しながらも彼がもう一度深くお辞儀して踵を返そうとしたところで普段なら止めずに傍観しているであろうライエルが革張りの
椅子から立ち上がり部屋から出て行こうとするカーマインの腕を掴んだ。勢いよく自分の方へと引っ張る。

「あっ!」

バランスを崩したカーマインは重力が導くままに倒れ込む。しかしその細い身体を床に強かに打ちつける事はなく、柔らかに
ライエルの腕の中に納まる。ふわりとバーンシュタイン特有の男女共に身につける香水の匂いがカーマインの鼻腔を掠めた。
柔らかく甘い、けれど強く印象に残るその香りにカーマインは僅かに気が静まるのを感じる。強張った肢体の力を抜いた。
けれど引きとめられた理由が分からず、悩んだ末、ライエル本人に問いかける。

「・・・・何故、引き止めるんだ。『失せろ』と、言っただろう・・・・?」
「気が、変わった」
「・・・・・殴るのか?」
「・・・・・・・・いや、やはり殴るのは気が引ける」

女の顔を殴るようでいい気がしない、と付け足してライエルは不服そうなカーマインを背後から抱いたまま次の言葉を探す。
しかし居心地が悪いのかカーマインは腕の中で離れようと身じろいでいる。放っておいても良かったが、思いの外、彼の身体が
抱き心地が良かったのでライエルは更に腕に力を込める事で抵抗を抑え込んだ。

「・・・・少し大人しくしてろ」
「なっ、離してくれライエル卿・・・・!」
「殴られる覚悟があるのならこんな事、何でもないだろうが」

ライエルの言に一理あると思ったのかカーマインは大人しくなる。しかし居心地が悪いのは変わらないらしく視線をあちこちに
飛ばしていた。ライエルはそれを上からこっそりと窺いながら、ほんの僅か、あるかなしかの微笑を浮かべる。所在無さ気に
落ち着かないカーマインがまるで小動物のように愛らしく思えて。そして段々とライエルの胸に今まで抱いた事もない、
まるで子供のような悪戯心が沸いてくる。その悪戯心のままにライエルはカーマインの白い耳へと顔を寄せた。
吐息が掛かるのを承知で口を開く。

「・・・・お前、何故私に謝りに来た。別にお前に非がある訳ではないだろう」
「それ、は・・・・・ッ!?」
「ん、どうした・・・・?」

ライエルのやや生暖かい吐息が耳に掛かり、カーマインは背筋を駆け抜ける何とも言えぬ感触に身を強張らせた。
原因を分かっていながらライエルはいっそ優しすぎるほどの声で労わる。それから舐めるような手つきでカーマインの
頬を硬い指先で辿り、ぴくりと波打つ細い肩に低く喉を鳴らした。

「・・・・・・頬が熱いようだが、どうかしたのか?」
「・・・・・い、や何でもな・・・・・んっ・・・・」

白々しい台詞を聞き取れるか聞き取れないか微妙な笑いと共に吐き出しながら、ライエルはカーマインにそうと気づかせぬよう、
揶揄する。対するカーマインはじわじわと競り上がってくる何とも言えぬ未知の感覚に耐えようと唇をきつく噛み締めていた。
それに気づいたライエルはこれ以上は可哀想かと顔を離してやる。しかし拘束した腕はそのままに留めた。

「まあいい。話を戻そう。お前は何故私に謝罪する?」
「・・・・だって、あの時、貴方は斬りつけられる『彼』を見て痛そうに、顔を歪めてた・・・・から・・・・」
「・・・・・・・・・・見て、いたのか」

コクリとカーマインは頷く。揺れた漆黒の髪をライエルは何処か不思議に思っていた。自分の表情は長い付き合いのある親友たちが
漸く判別出来る程度だ。それをあの厳しい戦いの中、この青年は視認したと言うのか。ライエルはカーマインの容姿以上に内面に
興味を抱く。その視野の広さに、お人好しすぎる優しさに、そして泣きたいほどに顔を顰めていながら決して泣かない強さに。
そっと、戯れではなく本当に労わるように、愛しむようにカーマインの髪を梳くように撫でた。紅玉の瞳も何処か柔らかに細められて。
身体を蕩かせてしまいそうなほど優しい接触にカーマインは目を瞬いた。そして緩慢に後ろを向く。

「・・・・・ライエル、卿・・・・?」
「お前は甘いな。それでは下種な連中にカモにされるのがオチだぞ」
「・・・・・・・・・カモ?」
「・・・・・獲物、の俗な言い方のようなものだ。知らんのか?」

ライエルの問にカーマインは恥ずかしそうに頷いた。そういえばオスカーからこの青年は箱入りで育ったと聞いたような気がするが、
まさかこれほど物知らずだとは思わずライエルは更にカーマインへの興味を深くする。恥ずかしそうに俯く姿もいやに扇情的で
名も知らぬ感情が次々とライエルの心の奥に積もっていく。それがじれったく、少しライエルには不快だったが、苛立ちを露にして
カーマインを怯えさせたくはなかったので何とか平静を保つ。押し隠したそれから気を逸らせるように再び低い声を落とす。

「・・・・もう一つ、お前に尋ねたい。何故、お前は自分を殴れと言った?」
「・・・・・・えっと、それ・・・・は・・・・・・」
「そうでもしなければ自分が許せんか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「私はお前の罪悪感の昇華に利用されるのは御免だ」
「そんなつもりは・・・・!」

ない、と言おうとしてカーマインは口を噤んだ。そんな気が全くなかったとは言い切れない事に気づいたからだろう。その、素直すぎる
反応にライエルは却って気を良くする。この世の中には奇麗事ばかり口にして自分を良く見せようとする下らない人間で溢れかえって
いるのにこの青年はそれをしない。それはライエルにとって非常に好ましかった。先ほど浮かべた微かな笑みに比べればもっと
はっきりとした微笑を口元に携える。背後から抱き寄せられているカーマインには知る事が出来ないのだけれど。しかし宥めるように
更に深く抱き込まれて、カーマインは驚いた。また失せろと突き放されると思っていたから。それなのにライエルの腕は何処か優しい。
しかも信じられないほど穏やかな声音で耳元に囁かれる。

「・・・・・・・・これが最後の問だ、カーマイン。
お前がもし、親友を傷つけられたとして・・・・怪我を負わせた者を殴って気が済むか?」
「・・・・・・・・・・・・・!」
「怒りに任せて殴ったところで怪我した者は治りはしない。それに、今度はお前が加害者になる」
「・・・・・・・・・あ・・・・・」
「それは酷く不毛で意味のない事だとは思わんか・・・・?」

それどころか、この青年ならきっと酷い罪悪感に駆られるだろうとライエルは思う。それほどまでにカーマインは人が好すぎる。
善良で純粋で稚拙。稀に見る内面に、ライエルは惹かれるの自覚した。そして胸に積もった感情が何を意味するかも理解する。
まだ納得は出来ない、けれど理解はした。およそ同性に抱くようなものじゃない。だから、理解は出来ても納得は出来ない。
だが、この場では邪魔でしかないそれを頭の隅に追いやり、カーマインの様子を見遣る。見下ろした彼はやはり恥ずかしそうに
顔を染めていた。しかもよく見れば泣きそうに瞳を潤ませている。それを認めるとライエルはバツが悪そうに視線を逸らす。
妙な気を、起こしそうで。自分を守るためにも、カーマインを守るためにも視線を外す他なかった。

「・・・・・とにかく、私の言いたい事は分かったな?」
「・・・・・・・ああ。押し付けて、すまなかった。結局俺は自分が楽になりたかっただけなんだ・・・・」
「・・・・・・・・・・・楽に、か」

ライエルは感慨深げにカーマインの言葉を反芻する。そしてふと、思いついた。自分の中でもやもやと霞の掛かった気持ちを
晴らせて尚、カーマインの荷も下ろせるだろう方法を。とは言え後者の方は取ってつけたようなものだが。あくまで自分の
胸に何か引っかかったような気持ち悪さを解消するために、そうする事に決める。ただ、これをしてしまえば先ほど納得
出来なかった感情を納得しなければならなくなるが。だが、そんな取るに足りない矜持に拘り続けるのも何処か馬鹿らしい、と
微かに首を振ってからライエルは問題の言葉を口にした。

「カーマイン、そんなに償いたいのならば一つだけ、罰を与えよう」
「・・・・・・・・・・・・え?」
「これをすれば、取りあえず私の気は済む」
「・・・・・・な・・・・に?」

思考がついていかないのか、何処か呂律の回らぬ口調にライエルは笑う。本当に見ていて飽きないなと、そんな見当違いな
事を思いつつ、ゆるりと肩越しに振り返るカーマインに誘うように悪魔のような甘い微笑みを返した。カーマインの瞳が
零れそうなまでに開かれ、長い睫は休みなく瞬き、白い頬には朱色の線が走る。それだけでライエルは満足だと思って
しまいそうになるが、やはりそれだけではつまらない、とカーマインの身体を反転させ、自分と向かい合わせにする。
そして短く告げた。絶対的な支配者のような声で。

「目を閉じろ」
「・・・・・・・・え?」
「早くしろ、許されたいんだろう・・・?」

その言葉にカーマインは躊躇するが、やがて素直に従い、長い睫で頬に影を落とすようにして印象的な異彩の双眸を
閉じる。目を瞑ると途端に幼くなるな、と率直な感想を脳裏に浮かべてライエルは口の端を愉悦に持ち上げたまま、
ゆっくりと上体を屈め、滑らかな白く柔らかい頬を両手で固定すると自分の顔を寄せる。白皙の面に影が落ち、
やがてカーマインの微かに何が起きているのか分からぬ恐怖からか震えている桜色の柔らかな唇にライエルの
冷えた薄い唇が重なる。時間にすれば僅か数秒。けれど何処か長く感じられる触れるだけの優しい口付け。
甘い余韻を愉しみながらライエルは唇を離す。対するカーマインは突然の事に頭が真っ白になっているらしく、
口をぽかんと開けたまま、子供のように愉しそうな笑みで自分を見ているライエルをぼんやりと見返した。

「・・・・・・罰は終了だ」
「え、なっ・・・・罰って・・・・ええっ!?」
「私は気が済んだが・・・・・お前の方は気が済まないのか?」
「なっ、当たり前だ。だって、こんなの・・・罰に入るか!?」

唇を押さえながら顔を真っ赤にして抗議するカーマインが妙に可愛らしく思えてライエルは今度こそ、胸に巣食った
感情を受け止めた。霞んだ靄も、しっかりと認めてしまえばいっそ晴れやかに散って。ライエルはまだ動転しているらしい
カーマインの耳元へ唇を寄せた。それだけでカーマインの肢体は跳ね上がる。いっそ愉快だった。

「そうか、この程度の罰では足りないか。では追加の罰を与えようか」
「え、追加って・・・・・んんっ・・・・・」

言いかけた言葉を、ライエルの口腔に飲み込まれる。触れるだけのキスではなく、奪うような濃厚なそれ。
事実カーマインはぴったりと唇を塞がれて、舌を絡められ、強く吸われて呼吸などろくに出来なかった。更に段々と舌が痺れ、
甘い責め苦にぼんやりと思考が滲み、雲の上を歩いているような気分になってしまう。それが何だか怖くて、カーマインは
必死にライエルにしがみついた。現実と自分を繋ぎとめるかのように。それから暫くして、糸が引き、ライエルの支えなしに
立っていられなくなるなるまで口腔を犯されたカーマインは漸く解放される。息が弾み、胸は上下し、視界は霞んだ
状態で僅かに険のある眼差しをライエルに送るものの、笑顔で躱されカーマインは肩を落とす。

「・・・・・・も、な・・・にす・・・・」
「何、とは何だ。私はわざわざお前が先の罰では納得いかぬと言うから付き合ってやったんだぞ?」
「・・・・・・・・なっ」
「覚えておけ、痛み苦しみのた打ち回るだけが罰ではない」

相手を満足させればそれだけでいい、とそれだけ言うとライエルは今まで支えていた腕を離した。途端に力の抜けている
カーマインはカクンと膝を折り、そのまま床へと座り込んでしまった。ライエルはそんなカーマインを愉しげに見ているだけで
手を貸してやろうとはしない。そして何とも言えぬ喜悦に心から笑んだ。それを間近で見てしまえば、見慣れぬものに、
しかもとても艶やかなそれに中てられてカーマインは言葉を失う。何も、言い返す事など出来なかった。そんな風に
笑う人だとは思っていなかったから。いつも、硬い表情をして、どんな時も冷静で、寡黙で何を考えているかよく分からなくて、
そんな印象しか持っていなかった。だから、思いも寄らぬ表情に戸惑うしかない。無言でただ、どうしようもなくカーマインが
佇んでいると傍目から見ても悪戯っぽい表情を浮かべてライエルは声を掛けてきた。

「・・・・・・腰が立たないようなら送ってやろうか、フロイライン・・・?」
「フロイ・・・・・・だ、誰が『お嬢さん』だ!」
「なに、原因は私にもある。遠慮するな」
「ちっが・・・・!遠慮なんかじゃなくて、俺は・・・・」
「煩い黙れ」

理不尽に言葉を遮られ、しかも意思を全く無視され、カーマインは近寄ってきたライエルの腕に男性ならば屈辱的とも言える
『お姫様抱っこ』の状態で抱え上げられた。当然、カーマインは恥ずかしさで顔を染め、じたばた暴れてみるが取り合っては
貰えず、逆に大人しくしろとでも言うかのようにまた口を塞がれてしまう。まだ余韻が残っている状態で深く犯されれば、もう
抗う気力など沸いてこない。結局カーマインはライエルの為すがままになってしまう。

「余計な事をせねばいいものを・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ッ」
「フン、とても許しを乞いに来た人間には見えんな」
「・・・・・・・・う゛」
「・・・・・・・まあ、そのくらいの方が『俺』は愉しいがな」
「・・・・・・・・・・あ」

急にライエルの一人称が『私』から『俺』に変わったのに気づき、カーマインは声を上げる。それは何処か、気を許してもらった
ようで何となく、得したような気になり、カーマインは再び熱くなる頬を自覚して、見られぬようにと全て諦めたようにライエルの
肩口へと顔を埋めた。それをただ、ライエルは穏やかに見守る。僅かに、新しい玩具を見つけた子供のように瞳を輝かせ、
けれどやはりどうしようもなく甘い感情に引き摺られて。馬車を手配する為に御者の元へと訪ねるまで艶やかな笑みを湛えながら
緩やかな足取りで『フロイライン』を腕に抱いてエスコートした。

この日以降、ライエルはカーマインと出くわせる度に、愉しげに苛めるようになったとか。けれどあからさまに『好きな子苛め』と
分かるそれに胸焼けを起こして、異を唱える者は現れなかったと言う―――






fin




毎回のように黒アニー様は手が早いです。
初めはストイックだったのに・・・・堕ちてしまわれたのですね。
リク内容は「偶には子供っぽい筆頭のアー主話」との事だったんですが、
・・・・・・何処が?いや、根底を覆すと嫉妬深い、やりたい放題で自分勝手と
よく考えれば黒アニー自体が子供のような気もするんですが・・・・どうなんでしょう。
えー、桧月様リテイクはいつでもOKですので遠慮なくどうぞ!(土下座)

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