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狡猾恋愛




「・・・・・・・・・アーネスト」

男の身体の下から何処か非難めいた声が響いた。
それは寝起きの少し掠れた、男にとって最愛の青年のもので。
咎めるようなそれに、アーネストは笑って。

「ん?何だ、カーマイン」

先ほどまで眠っていた青年、カーマインの身体を毛布の上から緩く辿る。
いかにも、思い知らせるような手つきにカーマインは微かに眉根を寄せた。
布越しではどうにももどかしい動きに細い肢体はシーツを乱して蠢く。

「・・・・・・・ん・・・・さっきから、何をしてる」
「・・・・・お前が俺を放ってさっさと寝てしまったからな」

ちょっとした悪戯だと口にしながら、その何処か淫らな手の動きは止まらない。
いつの間にか毛布の下へと忍ばされ、カーマインの服越しにするりするりと撫でていく。
対するカーマインはアーネストの言うところの悪戯を止めさせようとは思うのだが、何分寝起きで頭も身体も
思うように動かず。窘めるために大声を出すにも、ここは宿屋の一室で隣りの部屋にはウェインやハンスたちが
いるので憚られるし、自分に圧し掛かる大きな身体を蹴落としても同じ事なので結果、大人しくしているしかなく。
それが分かっているのかアーネストの行為からは全く遠慮というものが感じられずに。
カーマインは必死に声を抑え、ギッとまだ寝ぼけた瞳で自分の上にある男の顔を睨みつける。

「・・・・・おい、もう俺は起きたろう・・・・。止めてくれ」
「ちゃんと起きているのなら、俺を止められるのではないか?」

酷薄に、薄い唇が告げて。それがそのまま、カーマインの首筋に落とされた。
むず痒い感触に、身をくねらせた青年は恐らくこんな事をしながらも拗ねているのであろう、大人の面をした
子供の真白い頭を抱き寄せて、微かに横向いて仕方ないとばかりに溜息を吐いた後、ご機嫌取りでもするかのように
抱えた頭を引き寄せて、滅多にせぬ、自分からのキスをした。触れるだけで済まそうと思っていたカーマインは
すぐに口を離そうとしたのだが、上から押さえ込まれ、桜色の柔らかな唇を逆に貪られる。
初めは啄ばむように、しかし徐々に深く。舌を絡められて、仕様がなく受け止めつつ、何とか息継ぎをする。
唇が解放される頃にはそれは紅く腫れ上がり、濡れていた。もともと美しい容貌に艶が帯び、扇情的であったが、
彼には全くその気がないらしく。

「・・・・・・・眠い」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

色気も何もなく言ったものだ。流石のアーネストもその言葉には唖然とした。
しかもカーマインは本気で眠いらしく、瞼を半分ほど下げている。キスが裏目に出たのだろうか。
そんな事を考えつつ、アーネストは寝るなとカーマインの身体を揺すり上げる。

「・・・・・おい、寝るな」
「嫌だ、眠い」
「・・・・・・・・・・犯すぞ?」
「・・・・・君がその気の時は嫌だって言ってもするじゃないか・・・・」

現に今さっきだって寝込みを襲われたし?と言いつつカーマインは寝の態勢に入る。もぞもぞと毛布を
引き寄せるが、バッとそれを上にいたアーネストに剥ぎ取られた。先と変わらず非難の目を向けるが、上にいる
男の顔は涼しいもので。奪った毛布を床の上に捨てると、カーマインの細身の上半身を抱き寄せる。

「・・・・・ならば俺にその気があれば好きにして良いという事か」

抱き寄せた身体に服の上から唇を落とし。胸を辿ればカーマインの高鳴る心音を感じ取れる。それにアーネストは
不敵に笑うが、カーマインに髪を引っ張られ、微かに眉根を顰めた。

「・・・・・・・そんなに嫌か?」
「・・・・・・だってな・・・・君のおかげで俺は寝不足続きなんだぞ・・・・・?」
「お前が寝不足という事は俺もそうなんだがな・・・・。まあいい」

今日はもう興が殺げた、とカーマインの耳元に囁いて。落とした毛布を拾い上げ、カーマインを腕に抱えたまま
寝床に着こうとするアーネストにカーマインは珍しいなと視線を寄せる。その、奇異なものでも見るかのような瞳に
気の短いアーネストが機嫌を損ねない筈もなく。眉間に深い皺が刻まれた。

「・・・・・何だその目は。不愉快な」
「いや、珍しいなと思って。いつもは何言っても止めないのに」
「・・・・・・・・フン、あまり無理強いして泣かれても面倒だからな」

無表情に言ってのけるアーネストだが、寝不足続きと聞いてそれなりにカーマインを気遣っているのだろう。
多少無理をしても嫌われぬ自信はあるが、それで極限まで無理をさせて倒れられでもしたら困る。
自分勝手で強引さが目に付くアーネストだったが、ちゃんと自分の腕の中にいる青年を愛しているから。
むしろ愛しているからこそ抱きたいと思うわけで。それでも、そのせいでカーマインに負荷が行き過ぎると
言うのなら自制をする他ない。深く目を閉じた。

「・・・・・寝るのならさっさと寝ろ。明日は早い」
「それ、寝込みを起こした奴が言う台詞か・・・・・?」
「・・・俺はいつもお前が寝床に着くまで待っててやるのに・・・貴様は俺の湯浴み中に寝てるからだ」
「・・・・・・・何だ、それで拗ねてたのか」

アーネストの広い胸に頭を持って来られてるカーマインはやや篭もった声で言うと、両腕でアーネストの肢体を
抱き返す。何だか、急にアーネストが可愛らしく思えて。そんな青年の反応にアーネストは憮然とする。
まあ立派な成人男子が可愛いなどと思われて嬉しいわけもない。なので。

「寝ろ」

誤魔化すように、躱すようにやや強い声音で命令し、今度は自分が素早く寝の態勢に入った。

「・・・・・誤魔化しちゃって、可愛いなアーネスト」

カーマインの茶化すような台詞にピクンと眉間の皺が深まる。が、すぐに平静を整え、意地悪く告げる。

「・・・・・お前の方が可愛いだろう?」
「・・・・・・・・・・・・・・・なっ!??」
「・・・・・ほらみろ、顔が真っ赤だな。・・・・可愛いもんだ」
「・・・・・・・・・・・・・・~~~ッ!!」

漆黒の髪を指にくるくると巻きつけて。顔を赤くして胸をドンドンと叩いてくるカーマインを無視しながらアーネストは笑う。
本当は、ただこうして他愛もない会話をするだけの事も彼にとっては幸せな事で。構えば構うほど、予想以上の反応を
返してくれるカーマインがアーネストにとっては可愛くて仕方ないのだ。しかし、彼はそれをカーマイン本人に悟らせは
しない。それを悟らせるのは、何だか自分の弱みを晒しているようなものであるから。高慢でプライド高いアーネストには
耐え難い事なのかもしれない。

「・・・・俺はもう寝るぞ、カーマイン・・・・・ああ、そうだ」
「・・・・・・・何だ・・・・?」
「・・・・・・・・・俺の寝込みは襲っても構わんぞ?」

にっこり微笑まれて、カーマインは言葉を失う。しかし、すぐに言葉の意味を理解すると先ほど以上に頬を染めて。

「誰がするかー!!」

時間帯も部屋の間取りも考えずに大声で叫んだ。そしてアーネストの視線から逃れるように毛布を頭から
被れば、アーネストが声を立てて笑っているのが聞こえる。まあ、いつもの事だ。怒ったってどうせ笑うのを
止めはしないんだとカーマインは諦めたような表情をして瞼を閉じようとするが、ちらりと顔の上半分だけ毛布から
覗かせて、頬を真っ赤にしたままで。

「・・・・・・・・明日からは、ちゃんとアーネストが寝るまで起きててやる」
「・・・・・・・・・・・・・・・!」
「・・・・・・・じゃあ、もうおやすみ!」

それだけ言ってカーマインは頭を引っ込め、本格的に眠ってしまったらしい。毛布の下からすうすうと安らかな
寝息が届いてくる。それを何処か微笑ましげに見遣りながら、今度こそアーネストも眠りについた。明日はどうやって
苛めてやろうかなと幼い悪戯っ子のように楽しげに口元を歪めながら―――





fin


あれ、何これ?無駄に甘いですね。
初めは裏ものにしようとか思ってたんですが段々健全っぽくなって
きましたのでそのまま健全な方向に持っていってみたら甘くなってしまいました。
つ、次は切ない話を・・・・・書けるんですかねえ?(いや聞かれても)
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