忍者ブログ
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。



アイノコトバ




「死が二人を別つまで・・・・?随分とぬるい事を言うな」

パラパラと小説を捲っていた細い指先が止まったかと思えば、紡がれた低い声にカーマインは驚いた。
それは内容が突拍子もない事だった事もあるが、それ以上にあまりの不遜さに。
別段その不遜さが珍しいわけでもないが、恋愛要素が含まれているのは珍しいかもしれない。
カーマインは気を引かれてソファにどっかりと身を預けている長身の男の傍へと寄った。

「・・・・アーネスト?」
「ベストセラーだと言うから読んでみれば・・・陳腐な恋愛小説だったな」
「・・・・・え?」

眉間に皺寄せながら、アーネストはカーマインに向けて今まで読んでいたと思われる小説を放り投げる。
ハードカバーに包まれたそれの中表紙を見て、カーマインはああ、と一言呟いた。

「これ今一番売れてるっていう純愛小説か。そういえばルイセが読みたがってた」
「なら、くれてやる。大して面白くもないがな」
「アーネスト、一言余計。でも有難う・・・これ、あまり書店でも売ってないから・・・ルイセが喜ぶ」

ふわりと微笑む金銀の瞳を目に留めて、アーネストは小さく肩を竦めた。

「そんなに妹が可愛いか?」
「え・・・何で?」
「自覚がないのも考えものだぞ・・・・」

ハッ、と嘆息するとアーネストは僅かに姿勢を正し、空いたスペースに座るようカーマインに目配せする。
その視線を受けてカーマインは小説を一旦、目の前の机の上へと置いてからアーネストの隣りに腰掛けた。

「何・・・・?」
「こんなものより実体験でも話してやった方が役に立つんじゃないのか」

アーネストはトントンと机上の小説を指で叩いてから、するりと自らの手に嵌まっている手袋を口に咥えて外し、
生身の指先をカーマインの頬へと這わせる。それから緩く唇をなぞり、強く顎を掴むと驚愕にうっすらと口を
開けた薄紅の柔らかな唇を塞いだ。

「・・・・ん・・・む、ぅ・・・・・」
「厭らしい顔だ・・・・」

執拗に舌を絡ませながら、初めの頃に比べれば格段にキスが上手くなったカーマインの口腔を思う侭に貪る。
ギシリとソファを軋ませ、細身の上にアーネストは覆い被さると、ゆるりと滑らかな肌を肩口から辿っていく。
ピクンと小さく波打つ身体は恥らいながらも懸命に応えている。下腹部を撫でられて震えた。

「や・・・めっ・・・・」
「何だ、フィクションよりノンフィクションの方が聞き手も愉快だろう?」
「馬鹿っ、こんな事・・・・」
「言えるわけもない、か・・・?まあ、そうだろうな」

フン、と鼻で笑うと白皙の美貌のすぐ脇に手をつく。

「・・・・もっと・・・誰にも言えないような事をしてやろうか?」

妖しく濡れた微笑をアーネストは浮かべると、カーマインの色違いの瞳を覗き込む。
その目は悪戯っぽくもあり、同時にひどく真摯な気がしてカーマインは困ったように眉を寄せる。
圧し掛かってくる身体を押し戻そうとしていた指先を止めた。

「・・・・・アーネスト・・・・」
「何だ?」
「いや、何かあったのか・・・?何か様子が、変・・・」
「別に。あったとすれば・・・・・下らん本を読んで頭にきたのかもな」

ちらりと背後の机の上に乗った小説へと視線を飛ばす。

「・・・何、あの本そんなにつまらなかった?」
「・・・・・・永遠の愛とは、死んだら終いなのか?」
「・・・・・は?」
「永遠を口にしながら、死が二人を別つたらそれで終わり・・・・どこが永遠だって?」

永遠とは、尽きる事のない永久に続く時間。
終わりなきものである。なのに死んだらそれで終わりなのだと言う。
死ぬまで貫いた愛が永遠の愛になるのだと。
それの何処が永遠だと言うのか?

恋愛なんて下らない、と。
普段はそんな態度を取っているアーネストの意外な言葉にカーマインは目を剥く。

「相手が死んだら、また別の人間を好きになる。それが法的に許されている。実に下らない」
「あ、の・・・・アーネスト・・・・?」
「俺は死が二人を別つまでなどとぬるい事は言わん。カーマイン」

低めた声が妙に真剣なものに変わり、カーマインはパチパチと瞬きをする。
名を呼ばれるままに、紅い眼差しを真っ直ぐと見据えた。

「お前はどちらかが死ねば自由になるなどと思わん事だ」
「・・・・・・・・・・・・・?」
「もしも、お前が俺から逃げたいと思っていたとしていも、俺はお前を逃がさない・・・・死んでも」

ツゥ、とアーネストの手指がカーマインの漆黒の髪の生え際から、瞼を下り、頬を辿って唇に触れる。
初めにしたように親指で柔らかな感触をなぞると、前触れもなくそのままカーマインの口内へと忍ばせた。
歯列を擽り、赫い舌を構うと鼻先が触れんばかりの距離で見詰め合う。

「・・・・・お前は、死んでも俺のものだ、カーマイン」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「どうしたって逃げられやしない・・・・覚悟しておく事だな」
「・・・・・・・・・・・・うん」

一見、脅しのようにも取れる言葉。
けれどカーマインの耳にはどうしても甘く響いた。
故にとろりとヘテロクロミアは蕩ける。
次いで、表情に乏しい男の耳元へそっと囁く。

「君はまるで・・・・ガルアオス監獄のようだ」

二度と、抜け出す事の出来ない、絶望の象徴。
揶揄とも取れる発言に、アーネストは小さく笑う。

「あの程度のものと一緒にされては困る。望みが絶えるくらいでは済まんぞ」
「・・・・・・それは怖い」
「お前の逃げ場など、何処にもないんだ」
「・・・・・・・・・君に捕まったその時からね」

知ってるよ、とカーマインは微かに笑い声を漏らしながら散々アーネストがケチをつけた小説を手に取る。

「・・・・・事実は小説より奇なり、とはよく言ったものだな」
「だから言ったろう?ノンフィクションの方が愉快だと、な・・・・」
「それはアーネストにとってだろう?・・・・でも、まあそういう事にしておこうか」

カーマインは諦めたように息を吐く。
どうせここで抗ったって結果は変わりはしないのだから。
案の定、止まっていたアーネストの指先が再び蠢き始める。

「ノンフィクションの続きだ」
「・・・・お手柔らかに」
「知らんな」
「・・・・・・・言うと思った」

降ってくる唇を擽ったそうに受け止めながらカーマインは先ほど言われた言葉を密かに反芻する。
口にしたのがアーネストでなければ、非常に不愉快な言葉の羅列。
けれど、アーネストが言えばそれらはカーマインにとって愛しくも哀しいアイノコトバに変わる。

「本当に・・・・事実とは奇妙な事だ」

本格的に組み敷かれた痩身は、自らの手からころりと転がって行った小説に一瞥くれながらしみじみと
呟くと、まるでそれを咎めるように与えられる快楽に抗いきれず、そっと異彩の双眸を奥へと顰めた。






fin




突発物で意味不明です。
ちょっと小説を読んでいて納得がいかなかったらしい黒アニーさん。
何気に彼はロマンチストのようです(爆)
「死んでもお前は俺のものだ」という台詞を言わせたいがために書いたので
殆ど意味がないんですが(コラ)どうなんでしょう・・・やっぱりとんだ駄文・・・ですよね(泡)
PR
COMMENT
COMMENT FORM
TITLE

NAME

MAIL

URL

PASS
Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
COMMENT
 
カレンダー
01 2025/02 03
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28
フリーエリア
バーコード
ブログ内検索
OTHERS
Powered by 忍者ブログ
Templated by TABLE ENOCH